“東京駅の美しいパサージュの中に佇むARTS&SCIENCE丸の内でのトランクショーを前に胸がワクワクしています。みなさまお元気でしょうか。
最新コレクション『A Thousand Waves』は、昨年の旅で感じた匂いや感情から着想を得て制作しました。短い旅の中で出会ったひとつひとつの経験が重なり、今コレクションへとつながっています。この機会に、皆さまにもジュエリーとの出会いを楽しんでいただけたら幸いです。春の息吹を感じる頃にARTS&SCIENCEのお客さまに新作コレクションを一足先にお見せできることを楽しみにしています。
旅することが、私の情熱から遠ざかって久しく感じられていた昨年。思いがけないさまざまな機会に恵まれ、多くの旅を重ねる中で、特に心惹かれたのが沖縄でした。雲の動き、白く乾いた砂浜、湿り気を含んだ南風。その中に見えたのは、留まることなく流れ続ける時間の輪郭でした。私はその儚い美しさに魅了されると同時に、移ろう時の中にあっても変わることなく在り続ける空や海、そして私たちの身体や魂の、たしかな存在を感じていました。その感触は、沖縄をあとにしてもなお、私の中に残り続けています。幼い息子が少しずつ自立し、私は再びひとりで旅に出るようになりました。知らない土地を歩く高揚と不安を抱えながら、新しい眼差しで世界を歩き、旅の中で目にした景色が呼び起こす記憶や感情を、作品へと映し込んでいきました。
ピンクダイヤをあしらった“Seoul Bougainvillea Pendant”は、ソウルの路地に咲く花々に宿る情熱と可憐さを思い描きながら制作しました。パリを流れるセーヌ川の深い水底に佇む小石に積み重ねられた長い時間を重ね合わせ、石のような質感のタヒチアンケシパールをセットして“Memories of the Current Pendant”を作りました。“Tokyo Sonatine Ring”は、しずまった朝の東京の景色と映画『ソナチネ』を通して感じられる、イノセントさと洗練さを、無垢のあこやパールと、切れ目のないゴールドの曲線で映し出しました。
制作期間中、坂本龍一氏の『TRAVESÍA』(アレハンドロ・G・イニャリトゥ編)を繰り返し聴いていました。移ろい、旅路、進んでいく時間を静かに宿した音楽に身を委ねながら、旅の過程を再体験し、形にしていく。そんなアプローチで制作したコレクションです。このコレクションは、一つには収まりきらない、私の中にある生々しい光の記憶のかけらから生まれています。”
― mariko tsuchiyama