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Karl Fritsch at ARTS&SCIENCE

ロストワックス鋳造という量産品を作るための技術を用いて、あえて一点物の作品を制作するドイツ生まれのジュエリーアーティスト、カール・フリッチ。彼のアーティストとしての考えや、制作についてご紹介いたします。

カール・フリッチ

カール・フリッチは大学でジュエリーの制作技術を学んだあと就職しています。そして、制作の現場を経験してから学業の道に戻り、名門ミュンヘン美術院に進みヘルマン・ユンカーやオットー・クンツリから師事を受けました。

 

コンテンポラリージュエリーの分野では、型破りで遊び心あふれる作品へのアプローチで知られる彼の制作方法もユニークです。ロストワックス鋳造という通常は量産品をつくるための技法を用いて、表面に指紋を残したまま鋳造し1点もののリングを生み出しています。自由に手でこねて成形することもあり、リングの穴が正円でないものも。リングの石が取れてしまったところに細工したワックスを鋳造しその部分にのせるなど、制作をしながらアイディアを発展させていきます。石の扱いも豪快で、土台となる地金に石を貼り付けてみたり、思うがまま積み上げたり。本来であれば主役として扱われるであろう石も、ひとつの造形的構成要素として表現されます。彼はそのような手法を通じてジュエリーにおける美の概念を変え、個性とユーモアに富んだ作品を発表し続けているのです。

リングは彼の代名詞ともいえるアイテムです。インスピレーションは、ミュンヘン美術院などで受けた伝統的な制作トレーニングから生じることが多いそうで、デザインへのアプローチは手を自由に動かすことにとても重きが置かれています。作り始めると様々なアイディアが加わり、制作過程でどんどん進化していくことから、最初の構想と全く違う作品になることも。石が取れてしまうといった制作中のハプニングも新たな表現の機会と捉え、複雑な構造でありながら表情豊かな作品に仕上げられます。

 

ロエベ財団主催による2024年クラフトプライズのファイナリストにも選出され、世界中から注目を集める彼の作品は、身につけられる彫刻のような存在でもあります。現在、A&S青山では今年の新作を含む数十点のリングを集めたトランクショーを開催しております。ぜひ、店頭へお運びください。

PROFILE

1963年ドイツ・ゾントホーフェン生まれ。1982-85年プフォルツハイムのGoldsmiths School にて学び、1987-1994年はミュンヘンのAcademy of Fine ArtsにてHermann Jüngerや Otto Künzliに師事。現在はニュージーランドへ移住し、制作活動を行いながらオーストラリアのRoyal Melbourne Institute of Technologie(RMIT)でも教鞭をとり、ニュージーランド、アメリカの大学で客員講師を務める。ワックスを手でこねて原型を作るなど、宝飾の世界の常識を逸脱した制作手法が独特。長年リングにこだわって制作を続ける。素材の貴金属と宝石がユニークなデザインと力強く合わさり、チャーミングな存在感を発揮する。コンテンポラリージュエリー界でとくに際立った存在感を放つ作家のひとり。

  • BRAND

    Karl Fritsch

  • STORES

    A&S Aoyama

  • NOTE

    トランクショーは2024年9月6日(金) — 9月30日(月)まで