A&S 2024SS – 草木捺染

Chain net high count fine linen / natural〈チェーンネット ハイカウントファインリネン／ナチュラル〉とStone stripe high count super fine linen〈ストーンストライプ ハイカウントスーパーファインリネン〉は、A&S春夏シーズンの定番生地である高密度のリネン織物をベースに手捺染（てなっせん）を施した生地です。

チェーンネット柄は、江戸時代の伊勢型紙資料から選んだピンドットのネット柄をアレンジしたものです。五倍子染料を用いた防染台しごきと、生成りの下生地に五倍子でオーバープリントを施した手捺染の2色で表現しています。ストーンストライプ柄は、ヴィンテージの資料をもとに、手書き風の四角と線による幾何学模様にアレンジ。五倍子染料、本藍染料、柿渋染料の3色展開で、この柄をあえて滲むように開発した柔らかい防染糊を使用し、防染台しごきで表現しています。

伊勢型紙とは、三重県鈴鹿市の白子・寺家・江島地区でつくられていた、1000年以上の歴史を持つ伝統的な型染用の型紙(=柄)のこと。江戸時代、武士の裃に型染めが用いられたことで発展し、19世紀前半には、日本を訪れたドイツ人が大量の伊勢型紙を持ち帰ったことがきっかけとなりヨーロッパでも知られるようになりました。工芸品や服飾、バッグや壁紙など様々な分野のデザインに大きな影響を与え、ヨーロッパの小紋柄は伊勢型紙から着想を得ているとも言われています。

染料の五倍子（ごばいし）とは、ウルシ科ヌルデ属樹木の葉の付け根にできる虫こぶを乾かしたもの。アブラムシの幼虫などが寄生する時につけた傷や、樹幹内で生育する幼虫の運動などの刺激により、それを取り囲む樹木の組織が肥大し変質したものが虫こぶです。五倍子にはタンニン酸が豊富に含まれ、鉄と反応することで黒紫色が表れます。

手捺染とは手作業で行うハンドプリントのことです。捺染台に張り付けた生地の上に型を置き、その上から染料を混ぜた糊料（こりょう）を、へらなどを使って布に落とすことで模様を染め着け、蒸して色を定着させた後、洗いをかけて仕上げます。服地などに広く使われている伝統的な染色方法の一つです。

台しごき染めとは、型を使わずに、専用の器具を用いて色糊を連続的に供給しながら生地全体を擦り染めていく染色技法。手の感覚と経験を頼りに行う、限られた職人のみができる大変難しい技術です。防染台しごきとは、先に防染糊で柄を捺染した後にしごき染めを行い、防染糊の部分だけが染まらずに柄が残るという技法です。

古くから受け継がれてきたいくつもの技法、職人の手仕事を経てできあがった草木捺染のシャツやパンツ、ドレスが店頭に揃いました。ぜひ店頭でご覧ください。