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李起助 「素地」

韓国現代白磁の第一人者であるイ・キジョ(李起助)の展覧会を7月2日(土)から京都・HIN / Arts & Scienceで、7月13日(水)から東京・OVER THE COUNTERにて開催します。

Event details

イ・キジョはソウルから車で1時間ほど離れた韓国 京畿道南部の都市・安城(アンソン)を拠点に制作を続けています。安城は、昔ながらの民窯がいたるところに存在し、歴史性の高い白磁も出土する珍しい場所です。その土地で、鶏を飼いながら農作物を育て料理し、自身の器に盛りつけ、食べる、という自給自足に近い生活を送りながら制作活動をしています。「陶芸はいつも私の生活の中に存在している」という言葉にもあるように、器は日々使うことによって命が吹き込まれ、価値が生まれると言います。

 

A&Sでこれまで2度開催したイ・キジョの展覧会では、ガス窯で焼いた普段使いの食器をご紹介してきました。今回は初の試みとなる“タルハンアリ”を中心とした展覧会です。“タルハンアリ”とは朝鮮時代中期に多く作られた朝鮮白磁の代表的な形のひとつで、大きくて丸い満月を連想させるためタル(月)ハンアリ(壺)と呼ばれています。芸術的観点からも注目度が高く、作陶技術の高さはもちろん素地となる胎土が非常に重要になります。以前から興味はあったものの、自身が手がける“タルハンアリ”に相応しい胎土が見つからなかった、という理由でこれまで制作を見合わせていたイ・キジョが、5年ほどの年月をかけて特別に開発した胎土を用いて本作品を作り上げました。

また、ガス釜ではなく、登り窯(薪釜とも言われる)が用いられているのも特徴です。李朝時代に韓国で発明された登り窯は、炉内を各間に仕切り、斜面等地形を利用して炉内を一定の高温に保てるよう工夫されています。技術による人為的な力と、胎土と火による自然の力というそれぞれの要素が作用して生まれた作品です。

 

本展では“タルハンアリ”の他に、登り窯で焼かれた器も並びます。胎土そのものの色、その魅力を備えたイ・キジョの作品を存分にお楽しみください。みなさまのご来店をお待ちしております。

MESSAGE

〈白磁独自の白の魅力〉

 

“白色は、空っぽ、無の色ではなく、初めからすでに全ての色を含んでいる根源の色であり、究極の色です。白磁の白は白色ではありません。塗ったり載せた色ではなく、胎土そのものの色で本来の天然色です。ゆえに、母の懐のように優しく暖かく心地よく感じます。私はそれを素色とよびます。「素」とは蚕から糸をつむぐことです。

白磁の白は、それが単純に表面の釉薬の色ではなく、胎土の深いところから滲みでた色だからこそ美しく奥深いのです。また、白磁の白は目で見るだけでなく、手で触れて感じることができるのが魅力的です。感覚の深い部分、目ではなく触覚で。白磁の白は、白色ではない胎土の質料性を触覚で感じることができます。私たちは白磁のタルハンアリの形に惹かれますが、それよりも先に質料感、胎土に魅了されるのです。”

 

〈自身の白磁について〉

 

“私の白磁作業は、朝鮮白磁を穿鑿(せんさく)することから始まりました。朝鮮白磁の造形美と格調の根源を探求しながら、その美感を現代的な再解釈を通じて表現してみようとします。一つ目は、胎土と釉薬と関連する材料についての研究です。焼成過程を通して出てくる白磁の味を生かそうとすることが一番重要な課題になります。二つ目は、白磁の現代式生活に合う効用性と機能の問題について考えることです。陶磁器の形ごとに適切な大きさと形、重さ、太さを考慮します。三つめは白磁の造形性です。その根拠は、朝鮮白磁の節制された奥深くもシンプルな形の美感です。”

 

- 李起助

PROFILE

陶芸家。1959年生まれ。ソウル国立大学修士課程を修了。韓国現代白磁の第一人者として、チュンナン大学芸術学部の教授を務める。アンソンにアトリエ兼自宅を構え、畑を耕し、鶏を飼う、ほぼ自給自足の生活を営む。李朝白磁の手法を基盤とし、シンプルで使い勝手のよい白磁の器を手掛けている。料理を楽しむ心が強く反映される彼の器は、多くのバリエーションが。日常使いの器としての魅力を兼ね備える。2012年よりA&Sで取り扱いを開始。

EVENT DETAILS

TITLE

李起助 「素地」

KYOTO

HIN / Arts & Science, Nijodori Kyoto
2022年7月2日(土) — 7月10日(日) / 11:00 – 19:00
火曜定休

TOKYO

OVER THE COUNTER
2022年7月13日(水) — 7月24日(日) / 11:00 – 19:00
火曜定休