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Behind the Scenes – 㓛刀匡允

本日より、京都・HINにて編組品作家・㓛刀匡允氏の企画展〈万象〉が始まりました。長野県の森に居を構え、木こりとしての活動ともの作りを並行して行う㓛刀氏。自ら採取した樹皮や竹を用いて籠をはじめとした暮らしの品々を手掛けています。シンプルな佇まいでありながら、他にはない独自の美しさを持つ作品はどのように生まれるのか。これまでの歩みやもの作りについて、その一端をご紹介いたします。

服飾の専門学校でデザインやパターンを学び、家具の修復や料理、海外留学を経て自分自身と向き合い、感性を研鑽してきたという経歴を持つ㓛刀氏。パートナーからの“暮らしを手作りする”という言葉をきっかけに、より生活そのものを大切に捉え、日々使うものを手作りすることも生活の延長であるという思いから〈籠〉に辿りつきます。「わたしはどこかで自分を職人ではないと思っています。職人と作家の中道を歩く様な存在と言いますか。いちばんは思想に重きを置き制作しています。極力シンプルに、素材と向き合い手を入れすぎない事を意識していますね。料理に例えると“蒸し野菜に塩だけ”というか。ただ、だからこそ素材採取が最も重要となります」

長野の森に居を構え、火を起こすために木材を必要としたことから木こりに。もの作りをするようになってからはその経験を活かし、季節や時期を考慮しながら樹皮や竹といった素材の採取は自身で行なっています。あるとき、採取する過程で偶然メタセコイヤの樹皮が剥けているのを目にし、ネイティヴアメリカンが樹皮で籠をつくっていたという記憶を元にひとつの籠を手掛けます。樹皮を竹と組み合わせたこの籠は彼の代名詞とも言える作品です。出会った素材と自身の持つ記憶、そして自由な発想から生まれる“かたち”は、これまで歩んできた道で培われた独自の感性が感じられます。

「制作にはふたつの方向性があり、ひとつは暮らしの中で毎日使えるかたちや大きさ、機能性や構造体に重点をおいた〈日々ノ籠〉。もうひとつは、思いついたまま手を動かして制作する〈自由思想籠〉です。時折、自由思想籠として生まれたかたちを暮らしに落とし込み用途を得て、ゆくゆく日々ノ籠となることもあります」

 

もの作りとは「自分の内側と外側への探究心。そこから生まれた必然的なかたちと思想との出会い」と語る㓛刀氏。彼が手掛けた編組品をぜひご覧ください。企画展は10月27日(日)まで。

 

企画展・㓛刀匡允 「万象」の詳細はこちら

日々ノ籠
自由思想籠

PROFILE

㓛刀匡允

編組品作家。1986年生まれ。韓国と日本にルーツを持つ。2008年に文化服装学院アパレル技術科を卒業し、都内の北欧家具屋で修復を学ぶ。2011年にデンマークへ留学し、多国籍の人が集う学校で環境問題や平和について深く向き合う。その後、ニュージーランドを放浪中に、偶然にも禅老師ティク ナット ハンの教えに出会い感銘を受ける。2019年、長野に移住。籠を編み、森羅万象を見つめる。

Photos by Yuta Oda