1冊の本 「愛蔵版 宮沢賢治童話集」
この〈1冊の本〉は、新刊の中からさまざまな視点で選ばれた本をご紹介する、ARTS&SCIENCE 姉小路京都での試みです。
第3回目となる今回は、本にまつわるあらゆることを扱うBACH代表・幅允孝氏が、「愛蔵版 宮沢賢治童話集」をセレクト。装丁と挿画の美しい1冊です。
本文より
ジョバンニは、ああと深く息しました。
「カムパネルラ、またぼくたち二人きりになったねえ、どこまでもどこまでも一緒に行こう。
ぼくはもうあのさそりのようにほんとうにみんなの幸のためならばぼくのからだなんか百ぺん灼いてもかまわない。」
「うん。ぼくだってそうだ。」
カムパネルラの目にはきれいななみだが浮かんでいました。
― 宮沢賢治「愛蔵版 宮沢賢治童話集」より (406ページ)
「愛蔵版 宮沢賢治童話集」
- PAGE
448pages
- PUBLISHER
世界文化社
- PRICE
¥4,950 (¥4,500 excl. tax)
- STORES
MESSAGE
“世の中が不穏な空気になっていくときこそ、地に足つけて黙々と自身の暮らしや在り方を考えるべきだと思います。
宮沢賢治の土着思想と、清らかな無垢さ、自らの尊厳をどう保つべきかという示唆は、今の時代にこそ触れてほしいと思いました。
今年発売したばかりの愛蔵版は、代表的な物語と詩が17篇収録されており、美しくこだわった装丁も含めて、長く読み継がれるべき1冊。A&Sに似つかわしいと思いました。”
– 幅允孝
PROFILE
幅允孝/有限会社BACH代表取締役。ブックディレクター
人と本の距離を縮めるため、公共図書館や病院、動物園、学校など様々な場所でライブラリーを制作。近年は本をリソースにした企画・編集の仕事も多く手掛ける。京都「鈍考/喫茶 芳」主宰。