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Interview with munoz vrandecic designers

ARTS&SCIENCEがオープンして間もない頃から展開し続けているスペインのブランド〈munoz vrandecic〉。改めて、作り手であるふたりのデザイナーにお話しをうかがう機会を得られたので、ご紹介いたします。

彫刻家を経て、人の役に立つものを作りたいという想いからファッションの道へ。

  • ブランドの創始者であるミゲル・ムニョス・ウィルソン氏の経歴について教えてください。

    • Miguel Munoz Wilson(以下M)

      チリのサンティアゴで生まれ、19歳のときにアートの勉強を続けるためにスペインに渡りました。子どものころから絵を描くことが大好きで、どこへ行くにも油絵用の道具を持っていきましたね。マドリードの芸術大学への進学が決まり、そのときに彫刻を専門的に学びたいと考えました。きっかけは、黒大理石との出合いです。この素材にすっかり心を奪われたこと、さらにはイサム・ノグチやホルヘ・オテイサといった偉大な彫刻家たちに憧れていたこともあり、彫刻を専攻することにしました。

  • 卒業後は1992年まで彫刻家として活動されました。そこからなぜ、ファッションの道に舵を切ったのでしょうか?

    • M

      私にとって彫刻は、アーティストとして生きるための最初のステップでした。当時は、単なる美しさや彫刻家としてのテクニックを披露するのではなく、自分の作品を実用的なもの、誰かの役に立つものにするにはどうしたらよいのだろうと自問していました。その答えはファッションにありました。靴やアクセサリーなど、それ自体が目的を持った“もの”をデザインすることに答えを見出したのです。意図的にファッションにシフトしたわけではありません。人の役に立つものを作りたいという想いから、自然とファッションに惹かれていったのだと思います。

ミゲル・ムニョス・ウィルソン
  • 2003年には、あなたのアイデンティティである彫刻のテクニックを用いたファーストコレクションを披露しました。2004年には、ご自身の会社を設立しています。munoz vrandecicというブランドのコンセプトとクラフツマンシップへのアプローチの関係、そしてデザインのインスピレーション源について教えてください。

    • M

      ただデザインするのではなく、作ること——これがmunoz vrandecicのキーワードです。作ることはアートとファッション、そして過去と未来を結ぶことでもあります。素材に関しては、持続可能性に配慮した天然素材しか使いません。私にとってmunoz vrandecicは、靴とアクセサリーの“クチュールコレクション”なのです。それは、ひとつひとつの作品が手作業で作られているからです。ラスト(靴の木型)のデザインからパターン起こし、ベジタブルタンニンをはじめ、天然成分を用いたレザーの鞣し、さらにはオールハンドメイドによる金属や木のパーツなど、すべては何もないところから生まれるのです。そして何よりも重要なのは、美しいバルセロナの街にあるアトリエで、ひとつひとつの作品が愛情を込めて、丁寧に作られていることです。

      2009年には、人生の伴侶でもあるソル・カラミヨーニがデザインチームに加わりました。ソルはビジュアルアーツ業界(具体的には、映画の美術セット製作)で活動していましたので、私たちはすぐに意気投合しました。ソルは、ブランドに独創的でデザイン寄りの視点を持ち込んでくれました。私たちは日々の仕事からインスピレーションを得ています。アトリエは、まさに実験室のような場所。そこでは、偶然から新たな発見が生まれるのです。

ソル・カラミヨーニ

ブランド設立から22年。長い時間をかけて磨かれる技術力とブランドの精神。

  • 2003年のファーストコレクションから20年以上が経ちましたが、あなた自身は創作プロセスやクラフツマンシップにおける変化を感じていますか?

    • Sol Caramilloni(以下S)

      そうですね、私たちはデザイナーであると同時に作り手でもありますから、デザインとその構造を常に再発見・再解釈する姿勢は変わりません。現在、パリのショールームでは50を超えるコレクションが展示・販売されています。おかげで、シーズンを重ねる度に色々な調整を加えるための技術力も向上しています。munoz vrandecicのクラフツマンシップに関しては、長くてスピリチュアルなプロセスだと言えるでしょう。私たちは、長い時間をかけて技を磨きます。そのためには、クラフツマンシップに対する愛情が欠かせません。

  • 靴を購入されたお客さまから、興味深いご意見をいただきました。「munoz vrandecicはスペインのブランドなのに、日本人の足(特に幅と甲の高さ)に程よくフィットする」と。これは意図的なことなのでしょうか?また「ヒールシューズは、内部補強が施されていないにも関わらず型崩れせず、驚くほど軽い。それでいて、munoz vrandecicにしかないストラクチャーと美しさがある」とおっしゃる方も。どのような想いで靴の構造とデザインに向き合っているのでしょうか?

    • S

      私たちは靴のディテールにもこだわっていますから、こうしたご意見はとても嬉しいですね。洗練されたデザインに仕上げるには、靴の構造とデザインにとどまらず、人類学および社会学的な視点を常に取り入れるようにしています。これらは、私たちのデザインプロセスに欠かせないことです。また、私たちが常にクリエイティブな革新性を求められる理由は、季節ごとにコレクションを制作しているからだと思います。ひとつひとつのコレクションは、一編の詩のようなものです。

  • 偶然にも、ブランドがファーストコレクションを発表した2003年は、ARTS&SCIENCEがスタートした年でもあります。A&Sでは、2004〜2005年からすでにmunoz vrandecicのコレクションを扱っていました。A&Sと初めて出会ったときのことを覚えていますか?

    • M

      もちろんです。クリエイティブディレクターであるソニアさんと知り合い、あのころからA&Sでコレクションを扱っていただけたのはとても光栄なことでした。A&Sのビジョンとそのユニークなプロジェクトに心を躍らせ、munoz vrandecicはA&Sにぴったりのブランドだと思ったことを覚えています。日頃から多大なるご支援をいただき、心から感謝しています。

  • 最後に、日本のmunoz vrandecicファンの皆さまにひと言お願いします。

    • M & S

      バルセロナから、たくさんの愛を送ります。

現在、A&S青山・京都・福岡の3店舗ではレディースの新作バッグやシューズを、&SHOP青山ではシューズをメインにご紹介しております。munoz vrandecicのもの作り、その世界観をぜひ店頭でご覧ください。

BRAND

munoz vrandecic

Some photos provided by munoz vrandecic