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ZANINI with A&S – Interview with Marco Zanini

〈ZANINI with A&S〉の2023AWコレクションが8月25日(金)からA&S青山をはじめ一部直営店で展開中です。この展開にあわせて来日したデザイナーのマルコ・ザニーニ(Marco Zanini)に、3シーズン目となるこのコラボレートコレクションへの想いや、服にまつわることをお話しいただきました。

  • この度も、来日してくださりありがとうございます。このコラボレートコレクションの打ち合わせのときも日本へ来てくれましたね。

    • Zanini

      来ないという選択肢はありません!日本の皆さんに着てもらう服をデザインしているのですから。私にとって、実際にお店に立ち、様々な年齢や雰囲気のお客さまとコミュニケーションをとることは大切なことです。例えば、大きなレーベルのデザイナーが必ずしもこういったことをするとは限りません。もったいないことだと思いますね。精一杯クリエイティビティを発揮し、受け入れてもらうためには、まず相手を理解しないといけない。だから、私は日本行きのチケットをすぐに予約するのです(笑)

  • お客さまと向き合うことを大切にされていることがひしひしと伝わってきます。今回の写真表現もそうでしたが、人への興味がインスピレーションになっているように感じました。

    • Zanini

      大いにありますね。いま、コレクションを通して色々なことが見えてきていて。例えば、私はファッションのメインストリームには興味がないなぁ…とか。写真表現も、プロのモデルではない人物が被写体だとより感情が伝わってくるように思えたり。リアルな表現になるというか。だからこそ、我々のコレクションはオーセンティックでありたいと思っています。生地へのこだわりや職人の技による個性、私たちの妥協しないものづくりを理解くださるニッチな人たちにフィットすること。本物を愛する人のための服でありたいと思いますね。

  • この〈ZANINI with ARTS&SCIENCE〉のコレクションをデザインすることと、自身のブランドである〈ZANINI〉のクリエイションに違いはありますか?

    • Zanini

      A&Sの世界感を考える必要がある、という点で全然違いますね。このコレクションと向き合うときは、まず私自身の発想を編集していきます。そして、A&Sの表現やものづくりをイメージしがら余計な要素を削ぎ落としていく。このときは、頭の中にA&Sとソニアの存在があり、親しみを感じている人々やもので満たされた状態です。私だけのクリエイションではないので。ふたつのブランドが共にあることが大切な試みだと思っています。

今回の写真表現(Portrait 02 - 料理人・金継ぎ作家)
  • HalstonやROCHAS、Schiaparelliなどでディレクションを務められ、デザイナーとして素晴らしいキャリアをお持ちですよね。プロフェッショナルとして、環境にあわせて何をご自身がすべきかをよく理解されている印象があります。

    • Zanini

      そうですね。ブランドに所属していたときは、あくまでそのブランドが第一で自分の感覚はその次。経験、知識、創造力、すべてをそこに注ぎ込むというクリエイションでした。でも、私たちのコレクションは違います。誰かのためのデザインではなく、我々が愛するもののために手がけている感覚がありますね。それはきっと、A&Sと私に共感できることが多いからだと思っています。

  • そう言っていただけるのは嬉しいですね。ちょっとご意見をうかがいたいことが。日本で生産を進めていく中で、トワルチェックがあります。A&Sサイドで手を入れすぎてしまい、デザインに関わりすぎてしまうことの難しさを感じています…

    • Zanini

      この件についてはじっくり話し合いましょう(笑)ファーストコレクションの時は試行錯誤で、お見合いみたいでしたね。その次のコレクションが初めてのデート(笑)でも、だんだんと完成形に近づいているような気がしています。自身のコレクションの場合は、できあがったら自分で写真を撮って、販売して。でも、改めて全体感を眺めるとまったく完璧ではなくて。続けていくことで、製作を担う方々との関係性が深まりつつ、自分の本質も見えてきたり。何かを生み出していくことに時間がかかるのは当たり前。ある意味、究極の贅沢だと考えています。

  • それは、A&Sの考えにも通ずるものがありとても共感できます。では、あなたにとって「服を着る」こととは?

    • Zanini

      自分自身が楽しめるものであるべきで、人生に喜びを与え、時に問題を解決してくれること。あとは安心感ですかね、自分を守る鎧のような。例えば、面接に行くときに鏡を見て、その姿が気に入れば自信が持てますよね。それって喜びであり、問題解決につながると思いませんか?

  • わかります。以前、ドイツに住むお客さまで「A&Sの服に感謝しているの。着るたびに自信が持てて、私の鎧みたいなものね。だから、ここの服が必要なの。」と言ってくださった方がいらして。

    • Zanini

      とても良い言葉ですね。服を着ること=自信がついて気持ちも上がること。思い込みかもしれませんが、良い影響があるわけです。私は、装いに気を配ることは、文化やエチケットだと思っています。例えば、私の祖父は「都会でショートパンツを履くのはふさわしくない」と言っていて。昔の人の考えですよね。でも、やっぱり影響を受けていて、ミラノでショートパンツ姿の人を目にすると「実際にビーチに行くときは何を着ているのだろう?」と思ってしまう。今回、沖縄に行くために、ファンタスティックなショートパンツやカラフルな半袖シャツを持ってきました。都会では絶対に着ないからこそ楽しめるわけです。遊び心ですよね。服を着ることは遊びであるべきですが、ルールのない遊びではいけないと思っています。

  • 例えば、肌を見せる装いでは入れない施設もありますよね。暑いからという理由で薄着にしてしまうと入場できなかったり、場合によっては体を覆うものを渡されたり。

    • Zanini

      イタリアでも神聖な場所だと入れませんね。厳格であることが良いとは思いませんが、TPOに応じた装いをすることはロマンティックなことだな、と。服に価値を見出すこと。服とは、言葉であり文化でもあり、私にとっては情熱をかけて愛すべき対象です。だからこそ「服を着ること」そのものを大切にしていますし、ドレスコードや服にまつわるルールも大好きなのです。

  • とても興味深いお話でした。また次回来日されたときにもお話をうかがわせてください。

    • Zanini

      喜んで。いつでも日本行きのチケットを予約しますよ!