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William Oweson Förlag – Interview with William Oweson

日本を拠点に制作活動をおこなう、スイス・ローザンヌ育ちのウィリアム・オウェソン(William Oweson)。2024SSシーズンより、ARTS&SCIENCEにて彼が手がける〈William Oweson Förlag〉の展開を2月16日(金)よりスタートします。日本初ローンチとなります。

ウィリアム・オウェソンは、洋服職人、哲学者、作家、詩人、具象画家と多岐にわたり活動しています。本企画では、彼の生い立ちや日本で洋服職人として活動するに至った経緯、物づくりの思想や思いについて語っていただきました。

幼少期

私は無口でよそよそしく、周りの世界を観察しながら、気になったことを考えることを好む子供でした。その頃は、今よりも世の中に思うことがあり、権威や恣意的なルールに大きな嫌悪感を抱いていました。指示されることは嫌でしたし、たとえ求められたことに秀でていたとしても、世間的なルールから逸脱することは認められないことを早い段階で悟っていました。そのため、私は世間のシステムに興味が持てず学校も退屈でした。ある程度の年齢になってからも、興味や趣味はあまりなく、一人で考え事をしたり、空想にふけったりすることが多かったです。

 

そして、読書は大嫌いでした。これは強制されたからなのですが。今は毎日読書をし、素晴らしい考えに導かれ多くの喜びを感じています。本は自分にとっての必需品になりました。特に、古い文学作品が好きで、主に20世紀以前に書かれた本を読みます。原語によりますがフランス語、またはフランス語に翻訳されたものが多いですね。スタンダールやバルザックなど。

 

あと、意外とスポーツは好きでした。ちょっとした競技にも出たことがありますし、よく家族でスキーにも行きました。私の両親は、早くから個性と自立を促すことに熱心で、私に何かを求めたり強制したりすることはありませんでした。私が人生をどう生きようと、何を選ぼうと自由。でも、その自由には責任が伴うこと、そしてその選択の結果に向き合う必要があることを教えてくれました。

洋服への興味、そして日本へ

正直なところ、なぜ洋服に興味を持ったのか、はっきりと思い出せないのですが、本質的に自分の存在が表現できる可能性を感じたのでしょう。自分の世界を作りたいという欲求が、洋服作りに向かうコンセプチュアルなアプローチになり、高校卒業後は、とにかく技術面を身につけたかったので、クチュールメゾンのお針子を養成する学校に入学しました。ここは、洋服作りの実践面に重点を置いていましたが、通い始めてすぐに閉鎖的な考え方や、知りたいことを教えてもらえないことに不満を感じ、徐々に独学で学ぶことが増えていきました。

 

そしてある日、1980年代に来日したイギリス人デザイナー、クリストファー・ネメスのインタビュー記事を偶然見つけ、興味を持ちました。残念ながら彼はすでに他界していましたが、ブランドは続いており、彼の精神がまだ生きている場所があることを知ったのです。すぐに「インターンをさせてもらえないか?」とメールを送りました。返信がないまま、私は日本に行き、店を訪れることにしたのです。緊張しながらその場で自己紹介をしました。私の記憶が正しければ、2時間近く話し、残りの滞在期間をインターンとして過ごせることになったのです。その期間はあっという間に終わり、自分にとって東京以外の場所はないと感じるようになっていました。

 

パリへ帰国後、再びインターンとして東京に戻ることになったので、学校は辞めることにしました。東京での生活はとても楽しく、ある意味解放された気分が味わえました。そして2回目のインターンが終わる頃に、ロンドンで美術を勉強してみたらどうかと勧められたのです。洋服のデザインを独学で勉強していた時期だったので抵抗もありましたが、ロンドンのセントラル・セント・マーチンズに入学しました。絵画を学びつつ、美術史の勉強もはじめました。ただ、やはり大学の一般的なイデオロギーにはまったくなじめませんでした。古くて古典的な芸術を好み、現代的なテーマには手を出さない私を、とても変わった人だと周囲は思っていたようです。私が19世紀の人たちと同じような生活をしていて、電気も使わず、ロウソクの明かりだけで絵を描いていると本気で思っている先生もいたくらいです。

 

2022年の夏に無事卒業し、晴れて日本へ。2023年に「Tonal Arrangements in Philosophical Form」と名付けたシリーズのデザインと、私の哲学の全てを込めた書籍「General Synthesis of Fundamental Insignificance」を発表しました。そして、満を辞してARTS&SCIENCEへプレゼンテーションの招待状を送ったのです!

自身が手がける洋服や作品について

まだ、ブランドと捉えることに慣れていない中で、パターン作りからサンプルの縫製、ショールームの家具の製作まで、ほぼ全ての作業を自分が担っています。私は、生地や素材に重きを置くのではなく、特定のフィット感やラインを見定めることに重点を置きデザインをしています。ひとつのコレクションやイベントのために特別なものを作るよりも、ファッションの変動に左右されない、より根源的な表現や本質を追求したいと思っています。

 

私が手がける洋服や作品は、コンセプチュアルであるべきだと考えています。文学や芸術など様々な媒体を組み合わせて、ひとつの実存哲学や人生観を表現するシステムを作り出したいのです。洋服は、ある種の本とリンクしていたり、影響を受けていたりすることが多く、何らかの美的表現が伴っています。技術的な観点からは、私は通常、20世紀以前に着られていた衣服の構造や視覚的形状を観察することがとても楽しく、影響を受けています。

 

そして、可能な限り着心地の良い洋服になるよう配慮しています。素材は天然繊維や自然由来の繊維のみを使用し、時が来れば自然に還るような、ライフサイクルの過程で誰にも迷惑をかけない洋服作りを心がけています。私にとって、洋服をデザインすることは本質的に人生をデザインすることだと思っています。

日本での制作活動で思うこと。ARTS&SCIENCEについて。

日本はヨーロッパと比べると、洋服を作る上で本当に素晴らしい国だと思います。小ロットでも快く引き受けてくれるサプライヤーが多く、可能性の幅が他の国よりも大きいと感じています。また、人によって洋服に対するアプローチや評価が異なり、あらゆる表現が受け入れられていますよね。

 

勿論、気候や文化の違いも感じています。例えば、私が使っている画材の中には、日本の気候には適していないものもあります。絵を描くのに十分な耐性を持たせるために使っていた接着剤は湿度にとても敏感ですし、古い顔料を使った特殊な絵の具は日本にはなく、海外から輸入しなければなりません。自分の環境に自分の芸術活動を適応させる必要があります。些細なことはありますが、私は日本文化とその洗練された伝統に対して計り知れない愛情を抱いているのです。伝統的な建築、絵画、詩、演劇などに触れると、その瞬間を大切にしたいと心から思います。

 

ARTS&SCIENCEは、品質と技巧に注意を払い、ある種の精緻さがありながらもより繊細を求め提案しているショップ・ブランドだと思います。物事を限界まで突き詰めるその姿勢にとても驚かされます。今回、仲間に加えていただけることになりとても嬉しく思っています。

PROFILE

1997年、スウェーデンのストックホルムに生まれ、スイスのローザンヌで育つ。哲学者、作家、詩人、具象画家、洋服職人であり、その作品は後期ストア哲学を基盤としているが、さらに宮廷的な離隔の形式へと洗練され、実存的な美学体系の創造へと向かっている。エコール・ド・ラ・シャンブル・シンジカル・ド・ラ・クチュール・パリジェンヌで学び、2022年にセントラル・セント・マーチンズを卒業、美術学士号を取得。2022年に来日し、日本で制作活動を行う。

BRAND

William Oweson Förlag

DELIVERY

2024年2月16日(金)

EVENTS

2月16日(金)より、WHITE BOXで彼の世界観を表現したインスタレーションを行います。
イベント詳細はこちら