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Interview with Kazuya Sasaki – vol.1

ARTS&SCIENCEの新しい店が、昨年10月に鎌倉の材木座にオープンしました。内装を手がけられた佐々木一也さんは、2003年5月にできた最初の店、旧A&S代官山から、これまでに14軒もの内装、設計に携わってくださっています。その経緯をはじめ、ショップ作りのコンセプトなど、材木座にてお話をうかがいました。

Portrait by Kohei Omachi

佐々木一也さんとA&Sのオーナーであるソニア・パークとの最初の出会い。数々のショップを手がけることになった経緯とは。

    • A&S(以下A)

      A&Sの第1号店は2003年、代官山にオープンした9坪ほどの小さな店でした。ソニアにとっても初めて手がけた店で、思い入れもあり、試行錯誤しながらの作業だったと聞いています。その現場が佐々木さんとの最初の出会いになりますね。

    • 佐々木(以下S)

      僕は当時LINE INC.というインテリアデザインの会社に勤めていて、主宰する勝田隆夫さんの元で携わったのがキャリアの始まりです。まだ大学を卒業して1〜2年の頃でした。ソニアさんに初めてお会いした時に、最初のイメージとしてピエール・シャローのガラスの家の写真をいただきました。“機能がデザインを決定する”というこの家の思考は、その後の自分の空間デザインに繋がるとても大切な出会いでした。 10年ぐらい経って、ようやく現地に見に行くことができました。ソニアさんには色々なアイデアがあって、ある日、バスルームみたいにしたいという話をもらいました。ありきたりの店にはしたくないと。当時パリには、もともと居住空間や店だった場所を、改築せずにそのままカフェにしたような店舗が実際にあったようです。元肉屋さんだったり、元バスルームだったり。その流れで、ヨーロッパの古いヴィンテージ家具や道具、古材を使いながら作っていきました。

    • A

      現代の物件にあえて古いものを設置するやり方は、当時の日本では新鮮だったかもしれませんね。ソニアは元来古いものやヴィンテージが好きで、質の良い掘り出しものを探しに様々な国の蚤の市やインテリアショップに足を運んでいました。そういうもので構成されていたのが旧A&S代官山でしたね。

    • S

      シャンデリアや猫足のガラスケース、ガーデン用のテーブルや椅子など、上質で良いデザインの什器をソニアさんが揃えていて。それらを主役に、シンプルな箱を作る感覚で空間を考えました。作り込んだのは床のタイルぐらいでしょうか。白いタイルをベースに金色のタイルでA&Sのロゴを表現することになったのですが、文字のライン決めが難しく、原寸図を塗りつぶしながら試行錯誤した記憶があります。

ピエール・シャローのガラスの家
ARTS&SCIENCE 代官山(2003年)
    • A

      金色のタイルはなかなかの金額だったと聞きました。諦めないで使って本当によかったとソニアも言っていましたし、出来映えに満足していましたね。その翌2004年に旧A&S青山、2006年にSHOES and THINGSがオープンして。それぞれ、お店のイメージが違いますよね。ソニア曰く「その時々の閃きと出会いがある」とのことで、旧A&S青山では、当時ソニアが集めていたステンドグラスを入り口側の壁一面に嵌め込むかたちで使いました。

    • S

      そうです。とても印象的な装飾になりました。SHOES and THINGSは、モールディングとの出会いがあって。いわゆる天井や壁を装飾する内装装飾材です。取引先の輸入業者さんの倉庫に、バブル期にアメリカやヨーロッパから入ってきた在庫が残っていたので活用させてもらいました。モールディングを切りっ放しで終わらせたり、墨出しの線だけ残したり、仕上げ塗装はせず、素地のまま使ったり。単純にクラシックにまとめるのではなく、製作途中で終えることでコンテンポラリーに仕上げました。

    • A

      そして2007年のA&S丸の内は、A&Sの中で唯一の商業施設のインショップです。どんなコンセプトだったのでしょうか。

    • S

      天井がとても高い店舗だったので、パリのパサージュのように天窓から自然光が入るイメージで照明は考えました。あとは、背の高い黒のキャビネットをちょうどパリでソニアさんが見つけてきて。天高がある店だからこそ設置できました。これも出会いでしたね。そして、ファサードには大きなラウンドガラスを設置し、床はひとつずつ手加工した大理石のモザイク・・・妥協しなかったです(笑)。この頃まではヨーロッパの影響が強いかもしれません。

ARTS&SCIENCE 青山(2004年)
SHOES and THINGS(2006年)
ARTS&SCIENCE 丸の内(2007年)

ターニングポイントとなった、ふたつの印象的な店について。

    • S

      2009年にオープンした旧OVER THE COUNTERはとても思い出深い店でした。カウンター越しにお客さまと店員が商品を通して対話するというコンセプトを元に、その所作や遣り取りを簡潔に美しく見せるためのシンプルなディテールにこだわりました。壁をグレーの左官仕上げにしたことも、その後の店舗内装デザインにおけるターニングポイントになったと思います。

    • A

      この店は最初パレスミユキというビルの1階にあって、海外の雑誌の取材依頼をたくさん受けました(取り壊しにより2019年よりパレス青山へ移転)。当時はオンラインショッピングが急速に普及し、物の売り方について改めて考えさせられた時期でした。対話を通して物の背景を知ってもらい、選んで欲しいという思いが込められた店です。

    • S

      この時壁をグレーにしたのは、背景として商品が一番美しく見えるという機能的な意味もありました。この場所は元々畳敷きの守衛室で、しかも駐車場のすぐ横。この独特な立地も店の革新性を際立たせたかもしれません。

OVER THE COUNTER(2009年)
    • A

      この店をきっかけにA&Sのファンになってくださった方も多いんですよ。店そのものが大切な表現の場になりました。

    • S

      それは嬉しいですね。毎回それなりに大変なのですが、僕がデザインする上で一番難しかったのは、2018年の京都のCORNERです。5坪という小さな三角形の建物で、あそこは悩みましたね。

    • A

      三角のコーナーをアールにしようというソニアの閃きがあったお店ですね。

    • S

      はい、ギリギリで打開策が生まれました(笑)。形状が三角形なので内側から見ると角が奥深くなって圧迫感が出てしまって。壁の角をアール状にして丸くすることで、壁に流れるような一体感がある空間になりました。さらに元々付いていた小さな窓を開けてみたら、お隣の美しい庭が見えたので、窓を大きくして景色をお借りしています。いろいろなサプライズがありました。

CORNER(2018年)

3月29日(金)公開の〈Interview with Kazuya Sasaki – vol.2〉へ続きます。- A&S代官山、そして、新しい店となる材木座へ -

 

Text by Naoko Sasaki

PROFILE

佐々木一也

SMALLCLONE co.,ltd.
1977年岩手県生まれ。関東学院大学工学部建築学科卒業。1999年より、EXIT METAL WARKS SUPPLY~LINE INC.勤務を経て、2008年に独立。同年、設計事務所SMALLCLONE co.,ltd.を設立。