STEVE HARRISON “BIG IN JAPAN” FRI. 26TH APRIL - SUN. 26TH MAY, 2019

東京・AT THE CORNERで開催するSteve Harrisonの“BIG IN JAPAN”。比率の研究をテーマに挑んだ新作への想いや制作技法を作家本人が語り、バイオグラフィーと共に本企画を紹介します。

A Study of Proportion

ソニアからはじめて大きさの比較にまつわるアイディアを伝えられたのは、前回京都で行われたPotter’s Potsの展覧会の最中だった。最初は、単純に作品を大きく制作するということに判然としなかったが、数日後「わかった、これは比較の研究よ」という彼女の一言を受けた時、瞬間的にそのアイディアに魅了された。

この展示における大きな陶器たちは、その複雑なつくりから大きさとその比率を2年間に渡り探求し続けた結果であり、その集大成である。どれも、ひとつひとつを入念な計画のもと焼成している。結果よりもプロセスを見せるという私の決意は直感的なものであり、どの焼成も同じくらい重要だと認めることでもあった。そして、すべて炭焼きしている今回の場合、この大きな作品は普通のサイズのものと並べないと一貫性が失われてしまうのである。

チャールズ・ダーウィンはこう書き残している。「私は、推測なくして真の観察はないと固く信じている。」このアプローチは私が慣れ親しんだソルトグレーズの製法を改めて理解し、発見する大きな助けとなった。時として、方法を変えるのではなく、考え方を変えることが最大の障害となりうるのである。自分のスケッチブックのメモ――エリントン・リーイーで2017年に初めて焼成した時からずっと考えていること――には、こう記している。「これらの陶器は万全にはならない。それが続けるための理由になる。炭焼きがもたらす驚きは、私の作品に親しんだ人にはしっくりくるものではないだろう。観る人の評価を試すし、私の普段の作品と並べると欠陥品みたいだ。それでも、これらは素晴らしい成果として在る。それは、長年の実践から得た既知の正統さへの挑戦なのだ。練習もなくできあがった陶器。その姿は、作り手としての私とは何者かを鋭く問いかける。」

※クリックで拡大できます

A technical note

いくつかの本作品の表面には、石炭を用いた焼成の工程で生じた凹みや傷が見受けられる。私はこれらを際立たせるために、漆と金箔を施し、作品自体をより彫刻的なものとして仕上げた。この一連の工程は修理という概念で手を加えたのではなく、陶器に備わる類稀なる性質を理解し、その不完全さをも受け入れた結果である。

今回の作品制作にあたり150個あまりを焼成したものの、納得のいくものは30点にも満たなかった。それぞれの艶、色、そして風合いからは、マーティン兄弟による作風を彷彿とさせ、ついには彼らに習い、いくつかの作品には台座を用意した。彼らもまた、多くの作品を手がける中での成功率の低さを憂い、納得のいくもができたときは、その作品に備えられた「特別な力」を讃えたいと考えたのではないか。

About Steve Harrison

Biography (バイオグラフィー)

スティーブ ハリソンは、1967年にイングランドのウォールセンドに生まれた。陶器への情熱を見出したのは高校時代に受けた大学進学準備コースによる陶芸の授業がきっかけだった。2年に及ぶカリキュラムの中、1年という短い期間でもっとも高い成績を修め、陶芸に没頭するあまり祖父母のガレージにスタジオを構え、学校と自宅の両方で創作活動を続けた。
そして、大学卒業とともに英国の優等学位であるFirst Class Honours degreeを得たのち、ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)の陶芸科博士課程に進学する。1993年に卒業し、翌年にはロンドン北部にスタジオを立ち上げ、ウェールズにソルトグレーズ用の窯を構えた。現在もロンドンとウェールズを行き来しながら作品制作を行っている。必要性から生まれたこの工程は昔から変わることはない。
作品はこれまでに数多くの賞を受賞し、いくつもの出版物で取り上げられている。ロイヤルファミリーが暮らすケンジントン宮殿や公設および私設コレクションにも収蔵されているが、スティーブにとってこうした出来事はすべて偶発的なことであり、どのような人が自分の作品を求め、日常でいなかる使い方をするのか、ということに最も興味を持っている。


Material and processs (素材とプロセス)

陶土は非常に計り知れない素材で、金や銀のように誰もが認める価値はない。陶土を扱う芸術家の表現により、価値あるものになり得るとスティーブはいう。
RCAを卒業してからはじめたソルトグレーズによる焼成は、生涯をかけて取り組む技法であると見据え、30年に渡り陶芸家として年月を重ねてきた。どれほど経験を積もうと、高温な釜の内部に塩を入れて現れる表現は予測ができない。しかし、時として素晴らしい結果をもたらす。この技法特有の、水彩画に似た流れるような色彩が得られるのだ。窯に火を入れることは、窯にダメージを与える。年間5、6回の焼成作業をおこなった窯の平均的な寿命はおおよそ10年ほど。ソルトグレーズは、技術、釜との相互作用、さらには天候までもが重要な要素となる。これら全てのバランスが、焼成の良し悪しを決めるという。


Tea (紅茶について)

スティーブの生活において紅茶はとても重要な役割を占めており、一日を構成する主な要素だ。紅茶を淹れるという行為は、社交的な意味合いや、ひとりの独立した時間をあらわす。この時間の中で生まれる「待つ」という感覚は、スティーブにとってかけがえのないものである。薬缶に水をいれ、コンロに火をつける。その日の気分にあった茶葉を選ぶ。この一連の動きはゆっくりとおこない、もの思いにふける。マグカップの形や概念が多様性を生み出すことや、ひとつの研究があらゆる物事に通じることを感じる時間だ。スティーブにとって紅茶は、単純にリフレッシュするだけのものではなく、調和と共に生き、労働の道筋を照らしてくれる存在であるという。


Steve’s cup (ティーカップについて)

陶芸家としてのスティーブが、形や機能、使い方において、最も深く追及してきたのがティーカップだ。16歳の頃からインスピレーションの源であり続けている。ボウルは形こそ美しいがより普遍的で、持ち手が付いたカップの使い道はその目的に特化している。西洋文化とも馴染みが深い。スティーブは持ち手の遊び心あふれる性質、指先の感覚やそのフィット感、全体のバランスが生む作用を愛し、ティーカップへのインスピレーションは無限に生まれるという。

INFORMATION

  • TITLE
    STEVE HARRISON “BIG IN JAPAN”
  • DATE
    2019年4月26日—5月26日(日)/12時—20時(期間中定休日なし)
  • SHOP
    AT THE CORNER
  • BOOK
    作品集「BIG IN JAPAN」
    新聞型/フルカラー/全40ページ/53作品収録
    2019年4月26日(金)発売予定